ダルクローズ・リトミックレッスン

音楽の学びは、楽譜の前に、身体から始まる。

ダルクローズ・リトミックは、作曲家エミール・ジャック=ダルクローズが、音楽院での指導の中で見出した音楽教育法です。頭の中に思い描いた音楽的なイメージと、それを実際の動きとして実現する身体の働き——その間をつなぐ回路を育てることは、数ある音楽教育法の中でも、リトミックに固有の領域だといわれています。

宝塚すみれ音楽院では、このダルクローズの理論を基盤に、幼児から大人まで、音楽を身体で理解するレッスンを行っています。

リトミックで大切にする3つのこと

1、空間・時間・エネルギーを感じる

歩く、止まる、跳ぶ、揺れる。

こうした動きの中には、音楽を形づくる3つの要素——空間(動きの向きや広がり)、時間(拍・テンポ・間)、エネルギー(重さや強弱)——がすでに存在しています。

この3つを身体感覚として先に育てておくことで、のちに楽譜上で出会う強弱記号やテンポ記号が、実感を伴った理解に変わります。

2、即時に反応し、あえて止まる

音楽は待ってくれません。

合図に瞬時に反応する力と、時にはあえて動かずに待つ抑制の力。

この「即時反応」と「抑制」を同時に鍛えることは、リトミックが独自に担ってきた、脳と身体の連携を育てる訓練です。

人前で演奏するときに崩れない集中力は、ここで培われます。

3、自分の音楽として創り出す(即興)

聴いた音楽を身体で感じ取るだけでなく、そこで得た感覚を使って、リズムやメロディを自分の力で創り出します。

決められた振り付けをなぞるのではなく、「聴く→感じる→動く→創る」という回路を繰り返すことが、のちにピアノや歌で「自分はこう弾きたい」という意志を持てる奏者を育てます。

対象と内容

未就学児(3歳頃〜小学校入学前)

言葉より先に、身体でリズムと出会う時期です。

歩く、止まるといった基本の動きや、音の高さ・速さの違いを聴き分ける遊び(例えば、高音ではつま先立ちで静かに歩き、低音では大きなゾウになって歩くといった遊び)を通して、音の高さ・速さ・重さを全身で聴き分ける感覚を育てます。

自分でポーズや動きを創作したり、友だちと動きを合わせる経験も大切にしています。

絵本の世界を音楽と結び付けて表現するなど、耳・目・身体を使ってイメージ豊かに音楽を感じる力と社会性の両方を育てています。

Aクラス|小学生

リズム感や集中力の基礎を育てる時期です。

拍感、テンポ感、拍子感、フレーズ感、強弱やニュアンスなど、音楽的な要素を身体を動かしながら実際の音楽と結びつけていく感覚を養います。

例えば、拍子の中で一つひとつの拍が異なる役割を持つこと、フレーズの始まりや終わりでのエネルギーの違いなどを、身体表現やボールやフープを使った活動を通して体感し、学びます。

身体動作が意識しなくてもスムーズに引き出せるようになることで、意識を「どう表現するか」へと広げていくことができます。

Bクラス|小学校高学年〜中学生

身体の成長にともない、より複雑なリズム構造や楽典の理解に取り組む時期です。

例えば拍の分割(2つに分かれるか、3つに分かれるか)やリズムの拡大・縮小を身体で体感し、それを楽譜上の記譜へと結びつけるレッスン、調性・和音・転回形といった楽典、限られた音だけで曲をつくるペンタスケールの分析などに取り組みます。

リズムやメロディの即興も、この段階から本格的に行っていきます。

Cクラス|中学生・高校生〜大人

すでに楽器を学んでいる方が、自分の演奏解釈を身体感覚として掘り下げていく段階です。

音楽の空間・時間・エネルギーを、「自分はこの曲をどう聴き、どう弾きたいか」という解釈の問題として扱います。

例えば、頭(楽譜)だけでは不自然になりがちな5拍子や複雑なクロスリズムを、ステップや身体の動きとして体感し直すことで、自然な音楽との一体感に変えていきます。

また、曲の構造の分析、和音進行に基づくメロディ即興、実際のピアノ曲の和声・形式分析などに取り組み、人前で演奏するときに崩れない集中力や、緊張下でも自由に動ける身体も、ここで培われます。

ピアノ・ソルフェージュとの統合

リトミックを独立した科目としてではなく、ピアノ・ソルフェージュと一つながりの学びとして位置づけています。

リトミックで育った空間・時間・エネルギーの感覚は、そのままピアノの音色やフレーズの表現力の土台になります。

学びを積み重ねる:振り返りの習慣

リトミックレッスンでは、身体を動かして終わりではなく、レッスンごとにその日の身体体験や認識の変化、そしてそれをどう演奏へ還元するかを、生徒自身の言葉で振り返ります。

身体で感じた感覚(暗黙知)を、自分の言葉に置き換える(形式知にする)作業を繰り返すことで、単発の「楽しい体験」で終わらせず、次のレッスンやピアノの練習へと積み重なる理解に変えていきます。

年齢の異なる生徒同士が、この振り返りを通してお互いの気づきを認め合う場面も生まれています。

結び

身体は、最初の楽器です。

宝塚すみれ音楽院では、リトミックを独立した科目としてではなく、ソルフェージュ・ピアノへと続く「学びのプロセス」の第一段階として捉えています。

身体で「感じる」(リトミック)ことから始まり、耳と頭で「とらえる」(ソルフェージュ)、そして指先で「表現する」(ピアノ)へ。

リトミックで育った空間・時間・エネルギーの感覚は、そのままピアノの音色や表現力の確かな土台になります。


リトミックがどのようなものかは、実際に体験していただくのが一番の近道です。年齢やこれまでの経験を問わず、まずは体験レッスンでご相談ください。

※ 保育園・幼稚園向けの出張指導や、先生方への研修については「教育機関の方へ」をご覧ください。