ツィーグラー奏法・特別企画

身体と響きから、音楽表現を深める。

音楽は、指先だけで生まれるものではありません。

身体の自然な使い方、呼吸、重心、そして音の響きを丁寧に感じることで、演奏はより自由に、より深く変わっていきます。

宝塚すみれ音楽院では、ベアタ・ツィーグラーが開いた「魂の耳で奏でるピアノ奏法(Das Innere Hören)」の考え方を取り入れながら、身体と音のつながりを大切にした学びを行っています。

ツィーグラー奏法とは

ツィーグラー奏法は、1885年ドイツ・バイエルン地方に生まれたベアタ・ツィーグラー女史が拓いた、「魂の耳で聴き、奏でる(Das Innere Hören)」自然なピアノ奏法です。

鍵盤を「打つ」「叩く」動作としてではなく、心を鏡のように静め、自分の出す音を内的に聴きながら、無駄な力を手放した状態で音楽を移し替えていく——そうした奏法の考え方です。

第二次世界大戦中、ナチス政権下で指導そのものを禁じられながらも、ツィーグラー女史は弟子一人ひとりに命がけで奏法を伝え続けました。

その精神は高弟アンナ・シュタードゥラー女史に、そして日本においては藤原由紀乃先生に、口伝に近い形で正しく受け継がれています。

受け継がれてきた学び

藤原由紀乃先生は、ドイツ・ミュンヘンで4歳からアンナ・シュタードゥラー女史に師事し、9歳からはただ一人の内弟子として生活を共にしながら、ツィーグラー奏法の正しい継承者となられました。

日本ベアタ・ツィーグラー協会を通じて、現在も多くの学び手にこの奏法を伝えていらっしゃいます。

私も、2002年より藤原由紀乃先生に師事し、ツィーグラー奏法を学び続けています。

柔らかいピアニッシモで、一音だけを全音符で弾く。力を抜いて音を出そうとしても、最初はうまくいきません。

「手の中は空っぽで、空気だけで一杯になっている感じ」「音が天井から舞い降りてくるようなイメージ」——先生は様々な言葉を尽くして、理想の音とのちがいを具体的に弾き比べながら、根気よく導いてくださいます。

鍵盤を下す指に瞬間的に入る「力み」を手放し、聴くことと弾くことが無駄なく連動する——この感覚を掴むまでに、長い時間がかかりました。

しかしその一音一音を慈しんで聴く心は、生徒への指導にも生きています。

「今、何に気付けないで弾いているか」を察知し、より音楽的な音へと導く力の礎になっていると感じています。

生徒たちにも受け継がれる学び

この学びは、私だけにとどまるものではありません。

宝塚すみれ音楽院の生徒も、藤原由紀乃先生から直接指導を受ける機会があり、その場に私も同席し、共に学びを深めています。

レッスンで交わされる言葉には、技術の指示にとどまらない、この奏法ならではの世界観が息づいています。

「音は、聞いてもらえる権利を持っている」
「次の音が、嬉しそうに待っていることを考える」
「指でやらないようにすると、内側から輝いている音が出せる」

楽譜の技術的な指示の合間に語られるこうした言葉が、生徒たちの耳と心を静かに育てています。

ツィーグラー奏法で大切にすること

1|身体をゆるめる

余分な力を手放し、身体全体が自然につながる状態を整えます。無理に音を押し出すのではなく、自由に動ける身体から演奏を始めます。

2|響きを聴く

“手は何もしない”という感覚から、音が生まれ、空間へ広がり、消えていくまでを丁寧に聴きます。響きへの意識が、音色と表現を変えていきます。

3|音楽の流れに乗る

呼吸や重心の移動を音楽の流れと結びつけます。身体と心、音が一つにつながることで、より自然で豊かな表現を目指します。

特別企画・藤原由紀乃先生をお迎えして

宝塚すみれ音楽院では、日々の個人レッスンに加え、外部講師をお迎えしたレクチャーや公開レッスンなど、より深く音楽を学ぶ機会を設けています。

藤原由紀乃先生によるレクチャー

宝塚すみれ音楽院では、日々の個人レッスンに加えて、藤原由紀乃先生をお迎えしたレクチャーや演奏、公開レッスンの機会を設けています。

演奏を聴き、言葉に触れ、実際の指導を見ることで、参加者は自分の身体や音を新しい視点から見つめ直すことができます。

2023年2月26日には、宝塚文化創造館にて、「藤原由紀乃による ツィーグラー奏法レクチャー&演奏&公開レッスン」を開催いたしました。

次回は2027年3月7日(日)、宝塚文化創造館にて開催を予定しております。

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