石川正司

Ishikawa Shouji-01エリザベト音楽大学名誉教授

エリザベト音楽大学にて教授として長く教鞭をとられた。

レオニード・コハンスキー(兄はルービンシュタインとも親交深く、一緒に演奏活動をしたヴァイオリニストのパウル・コハンスキー 1966年まで武蔵野音楽大学で教鞭をとり、河上徹太郎・諸井三郎・井口基成・井口愛子・中村紘子・舘野泉らが師事している)、マックス・エッガー、アルベルト・モッツァーティ等に師事された。

著書:「バッハ インヴェンションとシンフォニア 学習への手引き」 「ピアノの勉強その心得」 、「学習者のための モーツァルト、ピアノ・ソナタにおける装飾音の実際」

また、新聞・音楽雑誌等への寄稿、ピアノの勉強に関する公開講座等多数。

Sumire

14歳より大学卒業まで師事したが、まず楽譜をきちんと読むことからレッスンが始まった。
音符・休符・各種記号・音楽用語などの一般的に「楽典」として勉強することは本当に初歩的・基礎的なもので、記譜法とは時代によってさまざまに変化してきているもので特にピアノ学習者にとってなじみ深い、バッハやモーツァルトまたそれ以前の作曲者たちの楽譜を読む時に必要な様々な知識についてなど、多くを教わった。
時代による様式や演奏スタイルの変化、また楽器の変遷などにも気を配り、再現芸術としてのピアノ演奏について事細かい指導を受けた。

ご自身もバッハのインヴェンションとシンフォニアの校訂譜を出版されておられるだけに、私たちにも、必ず原典版と各種の校訂版を照らし合わせ熟考した上で、自分の解釈を楽譜に書き込みレッスンに準備していく事が求められたが、楽譜を丁寧に読み音楽を捉える力や作曲への基礎力を鍛えられた。

が、反面何もかも四角四面に考えるのではなく、物事の本質をとらえ自由に発展させていくことも指導された。例えば、指使いなどは楽譜に書かれていることの意味を読み取った後は、(勿論学習の途上において弾きにくい指でも練習のための使う方が良い場面もあるが)より弾きやすい指を自分で選択することや、また楽譜に在る作曲者によるものではない、校訂者によるアーティキュレーションなどは、自由に取り扱ってよいことなど、手の形も良い音が出ればどのように弾いても良い等々・・・。
20年以上たった今でも、全く褪せること無い内容で、当時いかに貴重なレッスンを受けていたかが年月を追うごとに分かってくる。また、幅の広い人脈をお持ちで、ご自身の講座などに東京藝術大学の小林仁先生や市田儀一郎先生、ピアニスト園田孝弘先生等の豪華ゲストを迎えられ、地方で勉強している私たちにも一流のお話やレッスンを体験する機会も精力的に設けて下さった。

また、勉強の途上で、私のいい加減な取り組みを諭される時に「人に物を習う時には、まず教わることの100%を完全に身に付けてから自分なりの意見を述べるようにしなさい。例えば、学校の数学であればその単元を100点取って始めて、先生の問題の出し方の不備や内容について生徒側から意見を言えるのであって、自分が中途半端な理解しか出来ていないことを棚に上げて、つべこべ言うのは良くない」と話されていたことを、今でもよく思い出す。物事の取り組み方への基礎の基礎、ストイックな姿勢を教えられた。

生徒を育てることに情熱を注がれ、なんとかして引き上げてあげようとの叱咤激励の数々は、忘れられない。野球がお好きで、当時のプロ野球・巨人軍の川上監督の本など「これを読むと、どんな選手が良く上達し良い成績を修めるかがあなたにもわかるだろう」と薦めて下さり、高校生ながらにいろいろと考えながら読んだこともある。ごく最近お会いした時には「何とかして、やってやるんだという気構えが足りないのはダメ!イチローを見てみなさい!」とやはり野球選手を例にあげて仰り、未だに発破をかけられてしまったが、こうして私なりに目的意識を持って音楽を続けて来れたのは、こういう先生の言下の影響がとても強いと思う。
いつも厳しく、レッスンの度に落ち込むことも多かったが、卒業試験で、ピアノコーストップの成績を修めることが出来たときは、「良かった」ととても喜んでくださった。
その後も、夫の転勤に伴い転居を重ねる事が多いが、いつも「どこでなにをしているのやら・・・」と気に留めて下さり、私も現状報告をさせていただけるのが嬉しい。先生から継いだものを少しでも次の世代へ渡していくことが、ご恩返しになると思っている。

音楽だけによらず、様々な分野にも目を広げるようにともいつもアドバイスされ、先生ご自身も実に多趣味で博学でおられる。
「ピアノの先生とは、医者と同じようなもので、『診察と処方』の両方が同時に出来ないといけない。そして、ケースバイケースによる対応が求められるのだから、人を理解できる器も大切である。」と指導者としての心構えや、「人を大切にし、そして自分自身も人から愛される人になることも大切だ」と音楽家としての在り方も教えられた。門下生どおしの繋がりにもいつも気を配っておられる。学生の時は、聞き流してしまうことも多かったが、今になってみると、実に細やかに多くのことを教えていただいていたと、感謝にたえない。

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